読まなかった日記

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『シャーロック・ホームズ 10の怪事件』

(この記事は、自分が所属するボードゲームサークル向けの冊子に書いているゲームの紹介文の草稿です。画像などはまだありません。)

review: シャーロック・ホームズ10の怪事件

これは何か。ゲームブックです。つまり基本的に一人用。なのに、なぜか SDJ(Spiel des Jahres/ドイツ年間ゲーム賞) 1985受賞作。赤ポーンがついています。なのでゲーム会で「何へんなのやってんですか」と聞かれたら「控えおろう」とSDJの名前を出すといいですね。それで聞いた人が「へへー」と恐れ入るかはわかりませんが……。

もとはボードゲームとして出ていたものですが、「いやこれはどう見ても本ですよね」と、日本語版は本+付録として出版されました。

以前、サークルでも募って「ホームズをやるミニゲーム会」を開いたことがあります。私個人は全然「ボードゲーム」の一つだと思っていますし、その会もけっこう人集まりました(6〜7人いたと思う)。

ゲームブックが勝ち負けのあるゲームとして成り立つのか、といった話については、のちほどちょっと検討します。

内容物

目玉はなんといっても、ゲームブックの枠を超える物量と凝りよう。はじめて見た人に「なんですかこれ!」と驚かれることうけあいです。

私はそれほどシャーロック・ホームズに詳しくないので、内容物の「ホームズ的な」凝りようを突っ込んで説明することはできませんのでご勘弁を。というわけで、ゲームのコンポーネントとシステムの説明をします。

まずゲーム本体である本。「10の怪事件」は、10個の事件が短編形式で書かれています。ゲームブックですので、それぞれのお話が、パラグラフをバラバラにされています。普通に読んでも意味が通りません。

また、この本の特徴なのですが、パラグラフ番号が普通の数字ではなく、とびとびの「英字+数字」になっています。また、パラグラフの終わりにあるはずの「君は戦ってもよいし、剣を収めて微笑んでもいい。戦うなら35に進め。剣を収めるなら48に進め」……といった指示がありません。

この本でどうやってゲームを進めるのかは、のちほど。

本の最後には「付録」として、紙袋の中に以下のものが入っています。

  • ロンドン市街図
  • 住所録
  • よく使う住所の早見カード
  • ロンドンタイムズ

あ、そういえば。この本はまだヤフオクやアマゾン中古などに出るので、それほど苦労せず入手できますが、買うときには、これら4つ備品が全てそろっているかどうか確認しましょうね。とくに「住所録」がないと、ゲームとして一切機能しません。

<ロンドン市街図>

ひときわ目をひく、大判のロンドン地図です。ボードゲーマーには「スコットランドヤード」でおなじみの地図でございます。実際の地図をどこまで再現しているかは、私の知識ではわかりませんが……。

で、この地図の上に、先ほどの本のパラグラフと同様に、番号が振ってあります。つまり……いや、説明はもう一つ先で。

<住所録>

つぎに、赤い表紙の冊子がひとつ。開くと、アルファベットで書かれた人名がびっしり詰まっています。苗字とファーストネームの後に、番号が……。これはさきほどの「パラグラフ」「地図」と同様のものです。

つまり、この本において「パラグラフ」というのは「場所」のことを指しているわけですね。

本の中で、事件に関するなんらかの手がかりを得たら、「市街図」「住所録」をたよりに、手がかりである人物や、関連する施設の住所をつきとめて、その住所番号をパラグラフ番号としてジャンプして、本を読み進める。これが、このゲームの基本的な構造です。

普通のゲームブックで選択式になっているところが、「さぁ何が大事と思います?」と自由選択式になっているわけですね。

<住所早見カード>

これは補助的な道具で、「ロンドン警視庁」(まさしく、スコットランド・ヤード)「新聞社」「死体置き場」などの、お決まりの場所がカードになっているものです。

<ロンドンタイムズ>

さらに、「ロンドンタイムズ」という冊子がついてきます。新聞重要。新聞の重要性に関しては、ホームズ本人もたびたび言及していたと思います。このゲームでの新聞は、ゲームに直接使うものではなく、事件に関連する「かもしれない」情報を思いつくための道具です。作品世界にも厚みがでることうけあいです。なんせヴィクトリア朝時代ですからね。最高ですよね。

できることとできないこと

夢のようなシステムに見えますが、パラグラフのジャンプを、場所のジャンプと同じものとみなしてしまっているため、「パラグラフを進んでストーリーが流れる」ということがありません。状況は基本的にスタティックです。情報が徐々に開示されていくことで、その情報に関連づいた場所に移動するようになり、ストーリーが展開しているように感じられるだけです。

この本の続刊には、ひとつの事件を4日に分けて、日に応じて読めるパートを切り替えることで、ストーリー展開を実装しているものがあるらしいのですが……いえ……持ってますけど……気が遠くなるのでまったく確認していませんね。

REPLAY

では実際、プレイがどういう感じになるか、文字でリプレイしてみましょう……と思いましたが、全体が長くなるので、これはまた別のネタ切れのときに回します。

プレイスタイルとゲーム性

長々と書いてきましたが、こういう本ですので、一人で読むのが勿体ないのです。(興味があるかたはお声をおかけください。ホームズ会をやりましょう。)

勿体ないというより、一人で読むと、この本の持ってるポテンシャルを充分に引き出せない気がするのですね。

先日プレイしたときに思ったことですが、この本を「ミステリ」として遊ぶか「ゲーム」として遊ぶかで、プレイ感がちょっと違ってくるのかもしれません。というのも、コンピュータを使ったアドベンチャーゲームに慣れていると、つい「総当たり」を試したくなるのです。私が見ていた議論でも、「もうこのリスト総当たりしようぜ」「いやそれは根拠が」という話になったりしてました。

かくいう私も、もしこの本を一人で読んでいたら、考えるのが面倒くさくなって、「とりあえず全部見ていくか」ということになるかも知れません(だから、一人ではやらずにとってあるのです!)。「総当たり」も、意外なものを見つけたりできて楽しいのですが……。

限られた時間、限られた手数の中で、最善な場所を検討しようとすることで、ディスカッションが生まれ、ミステリ的な思考が発生するんじゃないかな、と思います。

……しかし、手数やプレイ時間に制限がある、と考えたら、なんかちょっと、協力ゲームっぽく思えてきたでしょう?

用具の検討

最後に、このゲームをゲーム会会場など、複数人でやるときの用具などを検討しておきます。こんな感じになるでしょうか。

  • 「10の怪事件」の本
    • 備品は最低、一つずつあればよい
    • 本は二人に一冊くらいの感じで……(だから不完全な中古も買う意味あるよ!)
  • タイマー
    • 時間をはかる。残り時間がつねに見えるものがよい。
  • ホワイトボード
    • 地図を貼り出す。
    • じゅうぶん広ければ、書記も使う。
  • 筆記具
    • 個々人で持っていると便利かも。
    • 書記には必須。
  • 広い紙
    • おもに書記が使う。
  • 手数表(行ったパラグラフと概要を控えるもの)
    • Excelなんかで「何手目」「行った場所」「メモ」を書き込む枠の表を作る

プレイの進め方は、これまでもいろいろ試しましたが、以下のようなやりかたが、わりとうまく回りそうです。

  • 「書記」を一人決める。
  • その人以外は「読み担当」に回る。
  • 読み担当がパラグラフを黙読する。
    • 書記は読まなくてもいい。
  • 読み終えたら「書記」が聞き取りしながら状況を書き出す。
  • 全員でディスカッションする。
  • 次進む場所を決め、パラグラフを移動する。

おわりに

なぜこんなものが翻訳されて日本で発売されたのか、不思議ですが(まぁ景気もよかったのでしょう)、結果的に世紀の奇書みたいなものが生まれてしまいました。そういえばこの本、日本語訳の監修はフーゴ・ハルさんがやられているという意味でも、筋金入りのゲームブックなのでした。フーゴ・ハルさんを知らないって? ならば……そう、14へ進め。

……ではなく、フーゴ・ハルさんとゲームブック、「怪事件」に関しては、Analog Game Studies の以下の記事などももお読みいただくといいと思います。

http://analoggamestudies.com/?p=661